研究者1203のブログ

「地獄」って何?地獄について考えた記事を色々書いてます。

地獄かどうか、「人新世」の資本主義社会に生きること

今さらながら、ようやく読み終わった。斎藤さんの『人新世の「資本論」』(2021)。

とても楽しかったから、飼い犬の太郎をなでなでして、話をまとめてみようと思った。

きっとペットも資本主義で苦しんでいるのかも。太郎は背中を撫でたらよろこんで尻尾を振っている。ここには愛だけだね。お金の関係じゃない。

「そう思うでしょ」とイマジナリーフレンド美少女リンさんに聞いたけど、ソファーに転がって返事なし。
りんさんは資本家だから反マルクス。最近は、環境保護に熱狂してて、いろんなエコビジネス調べてるみたい。

「僕とリンさんの関係は、お金で買った愛情かな、それともほんとの愛だけだと思う?」って聞いてみたら、これまた返事なし。と思ったら、

「犬と一緒にしないで」って。「太郎は可愛いけど」。「昆虫ペーストのサンドイッチ買ってきたよ、食べる?」って話の筋を変える。資本主義にはやっぱり興味ないみたい。

「どんな味?肉よりエコ?」って聞いたら、「おいしいよー。コクがある。朝ご飯にぴったり」

一口食べてみたけど、まあ、おいしいね。普通のサンドイッチ。別に牛肉やシーチキンじゃなくて十分。

でも、斎藤さんによれば、こんな感じでエコな食事するだけでは、足りないらしい。気候変動による危機を回避して、貧富の不平等を直すには。

「斎藤さんによれば、りんさんは資本家の悪だね。環境破壊の鬼だ」
っていったら、「お前が鬼だ。晩御飯も昆虫にする?」ってさ。表現ストレートすぎ。悲しい。

斎藤さんは、情熱的な人間で才能あふれてる気がする。文章から熱が伝わってくるね。犬は表情がないのに好意が溢れてるみたいに見えるように。

でも、「読んで思ったけど、資本主義ってよくできたシステムだよ。壊れないね」って思った。リンさんは、「当たり前、資本主義だから人間生きていけるよー。」って。ミドリムシドリンク飲んでる。エコな美容と健康らしい。これで朝ご飯と昼ご飯一緒かな。

考えてみれば、産業革命後、人口大幅のびたし、寿命も延びたし、天然痘やはしかで死なないし。ハンセン病も減ったし。身体にあばたや障害が残る人ってあまりいない。資本主義のせいで労働者は餓死するだけなら、とっくに人類は絶滅危惧種になってそう。

そういえば、犬も人間と一緒になって数が増えた。今度は太郎、僕がパソコンに集中しているから、リンさんの方に行ってしまった。頭撫でてもらって楽しそう。

とはいえ、仕事無くてお金なくて困っている人たくさんいるし、無理な開発で酷使されてる人もたくさん、それで事故で死んだり病気になったり。仕事無くて結婚できなくて家族もないとか、少子化とか孤独死とか。外国に来て文句も言えずいじめられて働いてる外国人労働者とか。そのうえ、温暖化で海面上昇で街が沈んで洪水で死んだら、お話にならないね。

海面上昇したらどこに逃げたらいんだろう。りんさんなら、「月面?」って答えるかと思ったら、「海の上に住む。船の上。」。意外。そういう手があった。

建設的な解決手段は、狭くなる土地を効率的に使う以外にないかな。

とか思うけど、斎藤さんは、具体的な実施項目を挙げてる。
「脱成長コミュニズム!!」
って叫んだら、「ファシストーーー」って、韓国語勉強しているリンさんに返された。

なんでだか。「環境保護を理由に文化を否定するから」だって。「文化をやめて小さい村に戻れってのと結果的には同じ、70億の人類にそのまま消えるように願ってる」って、簡単に教えてくれた。てことはリンさんも読んだのかな?

斎藤さんが訴える方法は、具体的には、消費組合とか生産組合とか、ワーカーズ・コープを広めて、生産と消費の自治管理・共同管理を進めることだって。巨大なグローバル資本、グローバル株式会社にすべてを任せるのは止めよ!っていう。

任せてたら、商品は変えても、働かされまくって、給料少なくて、ケツの毛まで抜かれて、生きていけなくなるから。ま、正しいな。対抗しなくては。自分たちが生きる場所を作らねば、環境保護しながら、とくに、弱い立場、グローバルサウスの国々の人と協力しながら。

それ分かるけど、太郎が膝に載ってきたので、尻尾を引っ張る。働きたくないのが正直なところ。協同組合でも、人間関係あるし、上司の年寄りに意見聞かなきゃいけないし。不真面目なら嫌われるしクビになるし。しかも給料はもっと少ないし。太郎をなでなでして、食べないで生きていけるのが一番楽なのに。そういう解決方法は無いのかな。

「人間やめるの?無気力すぎー」って笑うリンさんの突っ込み。話してないのに聞こえてるのかな。

斎藤さんの要点は、1使用価値経済(値段じゃない、使うものを)2労働時間の短縮(夜中まで無駄なサービス作るな)3画一的な分業の廃止(ライン作業は、酷使の元凶!4生産過程の民主化(会社執行部だけで決めるな、解雇するな!)ってこと。

でもこれって、資本主義経済でどれも実現できることでしょうってきがする。最近、週休3日ってよく聞くし、シンガポールとかで実験無かったけ。分業ライン工って、もう自動化の時代だし、部分的には途上国に残るけど、その分の教育と医療を提供すればよいんじゃないのかな。4は、会社によると思うな。組合でも構わないし。

要するに、斎藤さんの提案してる生産消費組合を作って、地域社会に帰って、うえの4つを実現しようって、すでに今あるし、資本主義のもとでの選択肢の一つだと思う。だから、実践したら、資本主義を強化するだけだ。脱成長にはならない。成長スピードが遅くなるけど、すでに遅いから問題ない。

でも、グローバル資本主義のなかの戦い方、ゲームの進め方としては大事かな。僕なんてアマゾンとグーグルの奴隷だから、それがなきゃ生きていけなくなる。別の対抗カードを持っておきたい。働き場所だって、種子会社だって、すべてグローバル企業が寡占しちゃったら、もう別のもの買えないし、給料も働き場所も減っちゃうし、ぎりぎり生活になりそう、てかなってる。

だから、グローバル資本主義に生き残れる会社や協同組合を作ることは大事かなって。生きる場所を確保して、どこかの誰かの言いなりにならないために。

そのためには、拡大めざす株式会社でもいいけど、地域密着型でもいいし、協同組合でもいいと思う。選択肢の一つ、戦い方をどう選ぶかじゃないのかな。都会みたいな非効率な場所より、地域で生きるのも選択だと思うけど、どうなんだろう。斎藤さん、その辺には答えてなくて、世界と連帯して戦えって感じで、ビジネス的な詳しいことは、経済の内容は、あまり触れないんだよね。

それに、科学技術と国家を適宜利用しながら、組合中心にさっきのことを実現するのって無理な気がする。

って、説明しだすと自分の論評ばかりで、太郎もリンさんもどこ行った?リンさんに聞いてみたいけど、もうどっか外出しちゃったみたい。太郎の散歩かな。太郎も、殺処分まえに助けてあげたから、名前までもらって楽しそうだけど、そうじゃなければペットビジネスの餌のままでかわいそう。

りんさんが、もらってこようって言いだして、お金あるのに、良い犬は買わないらしい。何でって、「かわいそう!」って目が潤んでた。資本家の発想はよく分からない。

太陽光パネルの開発とか電気自動車の開発とか、そんな簡単なのかな。ってのが斎藤さんの議論の変なとこ。組合作って、そんな小さい規模で研究開発、生産体制が敷けるのかな。電力管理のアプリだって、いまは小さいけどそれを開発し通信環境を維持するのは、とても手間がかかってる。それの人材と資源調達体制くらいの生産力を、組合だけで作り出せるのかな、疑問。

医療品や食料品だってそうで、大規模に工場生産に向かわない限り、70億人分出せるのかな。次の薬を開発できるかな。食品の分配をよくするにしても、地域のための地域消費の分だけでは、足りる気がしない。みんなが地元でとれる一汁一菜に満足すれば別だけど。それってでも、天候不順で飢饉が起きるんじゃないかな。薬の開発の順番は、たしかに抗生物質とか遅れてるらしいけど、それって巨大製薬会社否定よりも、補助金とか税制じゃないのかな。薬の開発を支える人の物資がどっから来るんだろう。

そうすると、グローバル資本に頼らなきゃ生きていけない部分もあるから、戦い方の一つで生産組合も大事だけど、資本主義は残る気がする。

それにそもそも、豊かに暮らしたいって物質的に思ってるのは、北も南も世界中の人間だと思う。じゃあ、禁欲したらいいのかな。でもどこまで禁欲できるだろうか疑問。

それに、国について触れないのも物足りないな。グローバルサウスって事実だけど、北の国と同じように南の国の政治家も腐っているでしょう。それに原因の一つもあると思う。資本主義というより、政治の腐敗の側面も突いてほしいな。それに入らずに、地域活動から乗り越えるって戦略とも思うけど、そのせいで、資本主義と政治の問題の区別と関係がはっきりしないかな。アメリカで医療を受けられない人が多いのは、資本主義というよりアメリカ人の考え方のせいじゃないのかな。日本もドイツも国民皆保険の資本主義国だし。

とこれくらい書いたとこで、「ただいま」ってリンさんが帰ってきた。水筒から水飲んでる。太郎も水入れからはあはあした出して飲んでる。おいしそう。「おかえり」っていいつつ、手洗いしたリンさんが隣に来て画面覗いてる。髪がいつもきれいだなって思う。

「長くてつまんねー。」とのお言葉。笑顔だから嬉しいけど、やっぱりつまらないか。「一個抜けてるよ。文化の話」って。「どんな?」って気になる。

「文化活動してない研究者1203には分からないと思うけど、市場があるから文化があるんだよ。」

いや、文化活動してるけどと思いつつ、このノートの記事だって、「市場で無駄な生産と労働者の不幸があるからじゃない」って返事したら、「抽象的ーー。」て怒る。「斎藤さんは、必要の国と自由の国を分けて、生産を必要、文化を自由に分けてる、それで両方大事だけど、必要、つまり生活に必要なものの生産は、無限の欲望にするんじゃなくて適正にしようって。それはいいよね、無駄な労働時間へるから」。

たしかに、そうかも、と思いつつ、うなずいて先を促す。「で、それはいいけど、どうやって不要不急とそうじゃないのを分けるの?って思う」と言う、真面目なリンさんの顔を見てると幸せ。
「ギターを中学高校生でも買えて、みんなで仲間でバンド出来て、ネットでいろんな作品をいろんな人と交換出来て。これってギター生産の市場とネットの通信環境があるからできるんだよ。もしギターが組合で生産で値段高かったらどうする?高校生買えないし、シェアしたら、いつ順番回ってくる?そもそも生活の必要か文化かって、誰が決める?選ばれた人だけがギターを貰えるの?って思う。ネットで交換しなかったら、どうするんだろう。近い家族と村の人だけで交換するのかな。身近な人たちで楽しむのも大事だけど、それ以外はしちゃだめなのかな。無駄なのかな。環境のために諦める?」
って、一気に話してくれた。「そうだねー。どうやって不要不急を決めるんだろう。考えてみれば、ゲームだって、べつに不要不急だけど、文化だよね、電気使うし無駄にサーバー使うけど。会社がいろいろ開発して市場で発売してくれるから、どんどんいろんな音楽聞けるし、ゲームできるよね。なんなら自分でも開発出来て。楽しい。」て答えたけど、これでリンさんどう思うだろ、お気に召すかな。

「そうそう、斎藤さんの話は、大事なんだけど、環境保護と労働者保護の名前の下に、文化を諦めるんじゃやないかなって思う。それとも諦めろって弾圧するかも。村の伝統的な音楽と一汁一菜で満足して禁欲できるひとはいいけど、禁欲して他を知るな、諦めろって、ちょっと困るな。私はもっといろんなの聞いてみたい。」って。

「でも、海面上昇で死んだら、文化も糞もないんじゃない?」って笑ったら、リンさんは怖い顔して、「わかってる―!」ってさ。だから、「斎藤さんは加速主義否定するけど、技術で問題をクリアするのを真剣にしなきゃだよ、斎藤さんの本見ても技術は詳しくなさそうな人だし。それに、環境も考えなきゃいけない物の値段のつけ方とか、いまは環境保護もみんな熱心だし禁欲も広めたらいいんじゃないかな。斎藤さんみたいな禁欲主義、私は明るい禁欲主義、楽しい禁欲がいいけど」。

リンさんも答えはないみたい。ソファーに戻っていった。お腹空いたし、「お昼食べる?とんこつこってりラーメン?」ってリンさんにも声掛けたら、「禁欲!」って水飲んで笑ってる。

 

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