研究者1203のブログ

「地獄」って何?地獄について考えた記事を色々書いてます。

竜宮城でした、地獄でなくて。アニメ「平家物語」の感想

この年初から放送されていたアニメ「平家物語
アマゾンプライムで見ました。
FODなら最初から全話見れたみたい。

もうとても感動で、良いアニメだった!

平家物語だから、後半は、平家の一門が死んでいくばかりの悲しい展開しかないから、アニメではどうするのかと思ったけど、悲しいだけじゃない、幸せと喜びのある表現でした。心の動きも、一人一人の性格の違いも、悩み方も、とても丁寧に分かった。作画と物語を作った人はすごいなって思う。

しかも、平家物語は、もともと長い物語だからどうアニメにするのかとおもったけど、そこは上手にポイントだけまとめて背景にして、琵琶の精神的成長を中心にしてるから、飽きなかったし、美しい物語だった。ちょっと説明調な場面は、琵琶が琵琶を弾いて語る場面になって、あまり面倒くさくないようになっていた。

あらすじはこんな感じ。
平家物語を大筋でなぞってるけど、もちろんそのまま原作通りではない。主人公は、琵琶(びわ)という琵琶引きの子で、その子が、偶然で平家一門と仲良くなり、そして滅んでいく平家一門の運命に悲しみながら、生き残る運命の琵琶は、琵琶を弾いて平家のことを後世に語り継ぐと決意するという話。

琵琶が子供の時から一緒に育った平家の一門が、戦で苦しんで亡くなっていくのは悲しくて仕方なかったけど、同時に、琵琶が自分のできることを探して、語り継いで祈ることを決めるという物語の構成は、見ていてとても感動して励まされた。オープニングの歌の歌詞とも合っていた。

で、お題と関連して、羊文学のオープニングの一節、「最終回のストーリーは、初めから決まっていても~」という部分。人間である限り、人生の結論は決まっているけれど、どうしようもないこともあるけれど、というのが平家物語とぴったり合う歌詞だなって、励まして元気を貰える。


それに、平家物語は、もともと鎮魂の物語だから、琵琶が平家物語を作ったという結論に持っていく構成は、ちょうどぴったり。

琵琶と、平家一門の交流もよかったけど、徳子との人間関係も、話の中で後半の軸になっていて、生き残る二人の視点から滅びる平家一門が描かれることになっていた。
だからこそ、勇ましいとか悲しいだけじゃなくて、滅びる側と生き残る側の気持ちが深く描かれていた気がする。名前を後世に残したい、悲しい、生きたい、もう生きたくない、弔いたい、生き残ったけど伝えたい、とか。対比と受け答えがあって、ほんとに物語の一番の良さがあったと思う。

で、なんで地獄かというと、清盛は地獄に行ったみたいな話だけど、維盛も地獄を恐れていたけど、話の最後は、そんな怖くない。竜宮城があるよって安徳天皇と一緒に海に入水するときのセリフ。
琵琶は死んだ人の魂が見える設定なんだけど、みんな一門が集まって幸せにしているから、竜宮城になぞらえた。竜宮城にいるわけじゃないけど、諸行無常で、一応、さいごは極楽浄土ってことなのかな。悲しいけど、ハッピーエンド。

なんか、インサイドヘッドのカナシミとヨロコビが表裏一体のことを思い出す。

みなさんおすすめ。

さいごに、このアニメの構成と絵を描いた人はすごいなって思った。監督は、山田尚子、脚本は吉田玲子。スタジオsaruというところだそうだ。平家物語をとてもうまく現代的に書き直していると思う。現代の人が見て楽しんで感動できる話になってる。ありがとうございました。

ちょうど、ふたりの制作の様子と考えをまとめた本が出ている。読んでみます。